古民家の保存と修理
保存することと、修理することは一見同じことのように思えるが、古民家再生において全く異なる側面をもつ。この二つには、古民家をどのように価値づけるかということと深く関わってくる。これから、民家再生を計画される方は、一度考えていただいけると良いと思う。
以下は、文章のみですので、お急ぎの方は、例に違えず読み飛ばしていただいて結構です。
保存について
保存は文字通り保つこと。保つための処置を含める。
保存の目的
保存の目的は、保つためであるから、わかりやすい。形を変えないこと、形が変わらないように処置すること。
モノが劣化しないようにすることなどの、日常的な管理なども保存に含めてよいと思う。
古民家再生における保存
古民家再生の工事が始まる前、ほとんどの時間を、保存のために建物が傷める原因を取り除く「掃除」に費やした。具体的には、建物の土台に土が覆い被さっているところをなどがあれば、この土砂を取り除くこと。
また、縁の下などに、廃材などがため込んであれば、処分することなどである。これら廃材は、土中のから不朽菌が集まり温床となり、白アリなどによる食害を誘発させる危険性がある。土台を風通しのよい空間に保つことが、建物を長持ちさせることになる。
修理について
保存と修理を分けて考えてみると、形を保つことと異なり、形を戻すことが修理である。修理の方が、一時的に短期間で行われることが多い、より多くの手が必要とされるからだ。
建物の場合、修理に似たものに「復元」がある、もともとの形に戻すことは復元と言われるが、この復元も、特定の段階(の一時期)に戻すこと考えれば、修理に含めて考えられる。お寺や、神社の文化財の修理、傷んだ木材を取り換えるなどして直すイメージがわかりやすい。
修理の目的
では修理の目的とはなんであろうか。ここまで、丁寧に読んでくださったなかで、上げ足を取りたい方がこのように言うかもしれない。「修理されなければ、朽ち果ててしまうから、それを直すことは、「保存」とは言えないか、どうだ?」と屁理屈をこねたければ、勝手のお願いしたい。
修理することは、価値を高めることであると考える。外観や、中身に手をかけて、それらのもっている意味や価値づけを分かるようにすること、と言い換えてもよい。価値というと、難しく思えるかもしれない。簡単に言えば、「良さを活かす」ことである。
古民家再生における修理
建物の良さをどのように活かしていくか、そのために、手を加えることが修理である。これまで述べた「修理」と表裏一体の関係にあるのが、「捨てる」ことである。以前に建築の専門家より、ご教示をいただいたことがある。「活かすことを考えることは、捨てることを明確化すること。」
具体的には、構造が弱くなっている箇所を補強する(取り替える)。
動く箇所など(建具など)がこれまで通りに動くようにする。これまであった機能を際立たさせる。不要な機能を取り払う(減築など)。
しっかりと建物を見て、良さはどこにあるのか、それが活かせているか、計画立案には、ご配慮されたい。